帰省中

札幌である。涼しい。

休みのはずが、締め切りと子供のことでほとほと疲れ果て、街に逃亡したのであった。本屋で大して読みたくもない漫画を一冊買い、喫茶店でデータのまとめ方を考えてみたが、まとまるはずもなく、そのまま夜になってしまった。

 

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ベルギービール🍺

 

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イギリスで学んだのは、人はチップスだけで生きていけるということだ。これで私の人生は少しだけ楽になった。サワークリームがささくれた心を癒してくれる。

 

ちょっと物足りないが、この後はノープランだしどうしたものか。

 

 

 

バーベキュー

私にとっての最終日はAstigmata、いやはや、やっぱりこのタクサには手を出さないでおこう。危険すぎる。

 

最後ということで、みんなでバーベキューしましょうということになった。みんなノリノリである

アメリカ式のバーベキューってどんなんだろう。巨大なビーフを焼くのか?

だいいち、このへんに河原や公園はない。どこでバーベキューをやるのだろう。

 

みんなについていくと、坂の下に店があって、みんな中に入っていく。ここで食材を売っているのか?

と思ったら、ひとりひとりがカウンターで肉だとポテトだの注文していくではないか。それを炭火で焼くのか?だが、店のテーブルに金網やコンロはない。

私は列の後ろにまわってみんなの様子を見ていたが、注文が早口で聞き取れない。とうとう私の番になってしまったが、メニューがスラングだらけで全くイメージがわかない。

こういうときの鉄則は「一番上を頼む」だ。ハンバーガーとポテト。あとビール。

 

なんだ、自分で焼くんじゃないのか……と少しテンションが下がる。

 

しばらくして料理が運ばれてくる。

 

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(食べかけですみません)

 

うん、うまい!

みんなで机を囲んで楽しくおしゃべりをしました。

 

 

 

 

 

・・・バーベキューか、これ。

 

えええ、みんなでバーガーを食ってビールを飲むだけか。じゃあ河原で家族連れや若者がやっているのは英語でなんていうの?家族でバーベキューに行くぞーって言ってハンバーガー屋に行ってビールを飲んだら悲しくないか?

 

いやしかし、さすがはアメリカ、ハンバーガーくらいと思っていたが、付け合せのチップスが重い。後半はかなり苦しい。無理やりビールで流し込む。

 

ふと横を見ると、みんな残しているじゃないか。お残ししてもよかったのか。そうか、慌てて全部食うことはなかったのか。

ひとりの女性がやおら立ち上がってカウンターの店員になにやらささやいている。彼女はテイクアウト用の箱をもらってきた。

 

お持ち帰り!そういうのもあるのか。

という漫画のセリフを心の中で叫んでしまった。まさか「バーベキュー」でテイクアウトをするとは。

 

謎は深まるばかりだが、もうタイムリミットだ。

みんなとももうお別れである。おそらくほとんどの人とは二度と会わないだろう。検疫所に勤めているというチリ人の男はハグして別れを惜しんでくれた。彼は家族と離れて、基礎コースからみっちり3週間もここにいるらしいから、さぞかし寂しかろう。

 

メモ:

検疫 quarantine クォランテイン

(本当に発音しにくい。)

 

ファイナル

引き続きフシダニの日。結局、昨日一日で標本にできたのはたかだか1種か2種だったようだ。がっかり。

今日の講義では昔の標本を共焦点レーザー走査型顕微鏡 (CLSM) で検査することで、100年前の学者が作ったフシダニの標本の体内の様子を見せてもらった。これはすごい!確かにロマンだ。

あとで先生と会話したところ、この技術にはとくべつな試薬もいらず、ただ標本をCLSMにかけているだけということで、確かに「これなら僕でもできるんじゃないか?」と思わせる。こういう直感は大事だ。先生は機械へのアクセスが難しいと言っていたが、私は職場の方針で実はすぐにアクセスできるんですよ。さっそくテーマを考えてみよう。

それにしても、これからのダニ学の発展には自家蛍光とCLSMは必要不可欠なのだろう。いやはや。

 

いよいよ残すところあと1日である。ようやく慣れてきたところでサヨウナラなのね。世の中みんなそうかもしれない。今日から Astigmata(無気門類)が入ってきましたが、途中で抜けます。

 

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緑の多いアパートからの眺めもいよいよお別れである。

 

Eryophydaeなど

いよいよ滞在も先が見えてきた。いよいよ最後かと思ったら、またドサッと二冊目のテキストがきた。すごいテキスト量だ。周りは若いから熱心でいいけど、おじさんはもう少ししんどくなってきています。正直。

 

 今日はChetverikov先生によるEriophyoidea (フシダニ上科)の講義、野外採集と標本制作。標本制作なら楽勝だろう……と思ったら、やはりハダニよりサイズがだいぶ小さく、つぶれやすいこともあって、なかなか虫体を拾い上げるコツがつかめない。となりの若いマーカス君に気を使わせてしまった。それでも何回か練習すればなんとかなるもので、つぎつぎ封入することができた。あとは一晩加熱。細工は流々、仕上げをごろうじろ。フシダニの場合はホイヤー液じゃなくて、体の構造の見えやすい赤黒い封入剤(名前忘れた)のほうがいい、とのこと。なるほど。

 フシダニの採集方法はいくつかあるが、びっくりしたのが植物体をボトルに入れて、洗剤とブリーチの入った水を注いでシャモジで3分間かき回し、その液を目の荒さの異なるふるいにかけて、落ちてきた残渣を拾うというものだ。ダイナミック!ただ、器材が必要なのが難点か。同様に植物体とエタノールを蓋付きの容器に入れて、バーテンダーのようにシェイクする方法もあって、こちらのほうが楽かもしれない。上記の方法は多くのサンプル個体がとれるが、後から標本用に拾い上げるのが大変なので、普通に目視で生きているものを柄付き針で取るのが個人的には一番楽なようだ。研究者はダニの種類によって使い分けるそうだ。

 講義で興味深かったのは、Eriophyoideaの深部系統は謎が多いということで、最近の中国グループの分子系統樹ではハリナガフシダニ科(Diptilomiopidae)が多系統になるそうで、またも形態形質による分類体系と分子系統の不一致が報告されているそうだ。ただ先生はこの結果には懐疑的であるようだ。

 フシダニは何億年前からの琥珀の中からも報告されていて、その姿が現在とあまり変わっていないのが驚きである。

 

炎天下で採集したせいか、今日はあまり食欲がない。

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サンタフェ・スタイルのサラダボウル。クリスピーでいける。

 

 

 

シラミダニ

今日は Heterostigmata(異気門類)のダニ。

アウェーの土地でアウェーの分類群となると、もうなにを言っているのかお手上げに近い。農業害虫のホコリダニと、院生時代にポテト培地か何かに発生したのを分けてもらって飼育したシラミダニなどは何とかわかった。(あれ刺すんだ。しらなかった。)

ヒトも刺すが、シラミダニは本来は主に昆虫寄生性で、おなかのなかで次世代が成長するという奇妙な習性で有名である。次世代は母親のおなかの中で交尾してから外部に出てくるので、オス成虫は必要最小限でよい。実際、9割以上がメスで、進化生物学の局所配偶者選択(local mate competition, LMC) の例として有名である。

Caraboacaridae ってなんだと思ったら、オサムシダニ!そういうのもあるのか。

 

晩はカップ麺とごはん。リンゴはおいしくて腹持ちがよいので重宝する。みんなはBBQにいったらしい。

 

 

 

ところで昨日書き忘れたが、Rayがサジェストしてくれた論文をメモする。

Nature Communicationsvolume 10, Article number: 2295 (2019)

Increasing species sampling in chelicerate genomic-scale datasets provides support for monophyly of Acari and Arachnida

Jesus Lozano-Fernandez et al.

https://www.nature.com/articles/s41467-019-10244-7

鋏角類の高次系統の最新版。ゲノムワイドの塩基配列データによるML法を使って、ダニが単系統であることを主張している。言われてみれば、ダニの単系統性はあまり疑ったことがなかったが、多様性を考えれば多系統の可能性も十分にある。この論文のメソッドは知識がないのでおいとくとして、書き方が少々わかりにくいのが残念である。

 以下もメモしておく。

10. Dunlop, J. A. & Alberti, G. The affinities of mites and ticks: a review. J. Zool.
Syst. Evol. Res 46, 1–18 (2008).
11. Van Dam, M. H., Trautwein, M., Spicer, G. & Esposito, L. Advancing mite
phylogenomics: designing ultraconserved elements for Acari phylogeny. Mol.
Ecol. Resour. 19, 465–475 (2018).

 

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もう理解不能。なんだこいつ。(Dasythraeidae科。ヤマアラシダニとでも言おうか)

 

The day of velvet mite

昨日の嵐は止むことなく、朝から雷が鳴り止まない。

 

午前は洗濯と書き物。Youtubeを見ながらなんとか洗濯機を回す。確かに難しかったが、ダイヤルをひねってレバーをひっぱれば回るというのは確かにシンプルかもしれない。乾きも早くて満足。外に干す習慣はないらしい。

午後は若手研究者のレイ・フィッシャー先生によるケダニ類の講義(日曜もやるのね)。こーれーは確かにマニアック!形態はもちろん、生活史の多様性も大きい。オスがメスをおっかける様子がどことなくユーモラスだ。なんとインドでは薬用に使われているそうだ。びっくり!

 アマチュアのファンも多く、google image でヒットする画像も抜群に多い。もしかして、トムソーヤが遊んでいたのはケダニなのかな。『ダニ・マニア』に載っていたような気もするが、明日レイにあったら聞いてみよう。ちなみにスペルは Tom Sawyer らしい。Tom Soya かと思っていた。

 このグループは特に素人の(ときにはarachnidsの専門書も!)同定ミスが多いという例を、いくつかのHPを引き合いに出しながらユーモアたっぷりに語ってくれた。話術って大事だよね。

 個人的に強烈な印象だったのは ケダニの micro-CT イメージ で、上下左右からの断面図を見て筋肉の配置や腸の位置が確認できる。Wow, これはハリウッドの近未来型SF映画で頭脳チームが使うやつじゃないか。すごいな。ここまできたか。

 帰りは間近に落雷するのを聞きながら、雨の中を走ってアパートに帰った。怖かった。いつもは寒いくらい効いている空調が、今日は全く効いておらずむしろ暑い。もしかして落雷の影響があったのだろうか。

 

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昨日の晩餐

バーベキューの恐怖

ついに恐れていたことがやってきた。ムリヤリ入らされたWhat'sApp(LINEみたいなもん)で、娘さんたちが

 

「一週間頑張ったから、みんなでバーベキューしましょうよ!」

 

とか言い出したのである。

 

きた。もう「リア充」の思考そのものである。なんで疲れたらバーベキューすることになっているのだろう。一週間も(かなりマニアックな)講義を聞いて顕微鏡を覗いているんだし、土日くらい普通に休みたいやん。今日また連絡があり、話が着々と進んでしまっている。みんながバーベキューを囲んで盛り上がっている中、ひっそり離れて立ち、焦げた野菜の切れ端をかじっている自分の姿が目に浮かぶ。

 

「あなたはどうする?」(≒いくよね)

 

という肩たたきをビクビク怯える生活となってしまった。


その後、バーベキューこそ取りやめになったものの、レストランバーで飲みましょということになって、先生自らがウキウキで手配しだした。

あまり気が進まなかったが、「お断りします」というのも変な感じがする。まあ、そこはそれ。ひとたび店に入ってしまえば、多少の疎外感はあったが、それなりに楽しい時間を過ごすことができた。ピザと地ビール(これはうまかった)を楽しみながらみんなの様子を観察していると、おしゃべりするだけで全然酒が進んでいない。自分は会話もよく聞き取れないし、もう少し飲もうと思って二杯目を頼んだときである。テーブルのみんなの視線が私に注がれた。隣の男が聞く。

 

「お前、おかわりするのか!?」

 

え、なんかしちゃいけない雰囲気だったのかな。なに、アメリカ人はおかわりしないの?
二杯目のビールはほとんど味がしなかった。

 

ほどなく、とくになんのイベントもなく、みんなひたすらおしゃべりして淡々とお開きとなった。

 

…… えー、なにこれー、全然足りないよ。アメリカ人ってたくさん食べるんじゃなかったの?完全に肩透かしだ。いやむしろ足りないわ。逆にバーベキューだったらどんなんだったのだろう。まさか肉を食わないのか?金網いっぱいに肉を並べて一心不乱に焼いてこそのBBQだろうが。白飯があるとなお最高だ。

 

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ファンの多いアワケナガハダニの仲間

 

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昼はフルブライト食堂でてんこもり。