紹介 晩酌の誕生

晩酌の誕生 (ちくま学芸文庫 イ-54-4)

 大昔は酒盛りは神事と結びついていたが、時代が下るにつれて家飲みがさかんになっていき、江戸時代ともなると今とあまりかわらない酒が嗜まれた。本書ではお江戸の晩酌事情が細かく紹介されている。江戸の風俗画が豊富なので目にも楽しい。酒の肴として欠かせない刺身やおでんを町民が楽しんでいる様子が目に浮かぶようだ。

 江戸時代の特徴は年間通じてもっぱら燗酒だったことだそうだ。冷酒もあったが胃腸を冷やすとしてあまり勧められなかったらしい。当時はすでに現代のような寒造りがメインとなり、地方の酒蔵から江戸に向けて廻船で輸送されていた時代である。江戸では相当量の酒が飲まれていたはずであり、実際、酒とともに食う蒲焼、すっぽん、仕出し弁当、寿司、湯豆腐などがテイクアウトや移動販売が隆盛だったことからもその消費量の大きさは想像できる。

 ともかく、あまり堅苦しく考えず、晩酌をしながら気楽に読むのが丁度よい本だろう。