紹介 キツネを飼いならす

あらすじ: イヌ科のうち家畜化されたのはイヌだけではなく、キツネもそうである。人為的に家畜化する試みは、ルイセンコの悪夢の時代を生き延びたベリャーエフが推進した(兄は粛清を逃れられなかった)。すでにある程度の実績をあげていた彼は、シベリアの…

紹介 統計分布を知れば世界が

今年も雑多な本の感想やらなんやらをボチボチ更新していきますので、どうかよろしくおねがいします。 統計分布を知れば世界が分かる 身長・体重から格差問題まで (中公新書) 作者:松下貢 中央公論新社 Amazon 正規分布、べき乗則、対数正規についてコンパク…

紹介 巨大おけを絶やすな!

小豆島の醤油は本当にうまい。四国に住んでいるからそれはよくわかる。しかし、発酵過程に伝統的な木の樽を使って熟成している蔵は全国的に少なくなってしまった。この本では醤油の蔵元が使っていた桶が破損してから、桶を自分たちの手で再生して地域おこし…

紹介 パディントン発4.50

パディントン発4時50分 ミス・マープル (クリスティー文庫) 作者:アガサ・クリスティー,松下 祥子 早川書房 Amazon 再読。本作のマープルは徹底的に安楽椅子探偵を決め込んでいる。列車の並走時に殺人が見えたという友人の話から、沿線の大屋敷に目をつけ、…

紹介 寄生虫を守りたい

寄生虫を守りたい 作者:佐々木 瑞希 dZERO Amazon 寄生虫(とくに吸虫)への偏愛に満ちた本である。読みやすくてユーモアに溢れており、楽しそうな様子が伝わってくる。私は冬場に湖沼に集まったカモの観察を楽しんでほっこりするのだが、そのような光景を見…

紹介 晩酌の誕生

大昔は酒盛りは神事と結びついていたが、時代が下るにつれて家飲みがさかんになっていき、江戸時代ともなると今とあまりかわらない酒が嗜まれた。本書ではお江戸の晩酌事情が細かく紹介されている。江戸の風俗画が豊富なので目にも楽しい。酒の肴として欠か…

紹介 ダーウィンの呪い

ダーウィンの呪い (講談社現代新書) 作者:千葉聡 講談社 Amazon 名著『招かれた天敵』を上梓した著者の渾身の作品。ダーウィンの伝記が描かれるものと期待していたのだが、内容はダーウィンのもたらした負の側面、優生学が多くを占めている。正直なところ、…

紹介 青い壺

無名の陶芸家が焼き上げた青磁が、たどり着く場所で様々な人間模様に出会う。こう書いてしまうと平凡だが、話のたびに舞台が大きく入れ替わるので読んでて飽きない。向田邦子と似ているところもある。私が面白かったのは後半の修道女、シスター・マグダレナ…

紹介 「死んだふり」で生きのびる

「死んだふり」で生きのびる 生き物たちの奇妙な戦略 (岩波科学ライブラリー 314) 作者:宮竹 貴久 岩波書店 Amazon 死んだふりが捕食回避であることは古くから予想されていたが、いざ実証してみよとなると難しい。この問題に取り組んだ著者の研究の足跡を記…

【祝】ありがとう19周年

よりぬきカツラくんはおかげさまで19周年を迎えました。 ブログの全盛期は過ぎても、ここは大切にしていきたいと思います。 2010年前後に書いていた点取り占いもまた復活させていくつもりです。 今後ともよろしくおねがいします! ちなみにもうナンコクには…

紹介 ころぶところがる

自転車漫画ということで、自転車に興味ない自分についていけるかなと心配していたが、その心配を超越するような内容だった。ネタバレはしたくないが、玄奘がロードバイクを背景にして祈る扉絵をみたときは「マトモじゃない漫画」という確信を抱かせるものだ…

紹介 家畜化という進化

家畜化という進化ー人間はいかに動物を変えたか 作者:リチャード・C・フランシス 白揚社 Amazon ダーウィンの『種の起源』は家畜や家禽の多様性の話で幕を開ける。私たちの最も身近にいる生き物として、家畜は多くの人が興味を持つ対象だろう。そのルーツを…

紹介 招かれた天敵

招かれた天敵――生物多様性が生んだ夢と罠 作者:千葉聡 みすず書房 Amazon 応用昆虫学の本でこれほど濃厚な本は読んだことがない。生物進化と生物多様性の観点から、生物的防除の有名な事例の背景と結果をじっくりと描いている。そのため、教科書の一覧表のよ…

紹介 貴族探偵

貴族探偵 (集英社文庫) 作者:麻耶雄嵩 集英社 Amazon 専門的な本が続いたので今日は軽めに。推理しない貴族が探偵で、実際の推理はメイドや運転手が行うというもの。この著者はこういう変則的な話が得意だ。5篇のショートストーリーから構成されている。文庫…

紹介 昆虫の交尾は味わい深い…。

昆虫の交尾は、味わい深い…。 (岩波科学ライブラリー) 作者:上村 佳孝 岩波書店 Amazon 昆虫のペニスへの偏愛が感じられる本である。まさに昆虫【交尾】博士である。内容は理知的なもので、多くの昆虫で交尾にまつわる新発見を写真とともに淡々と述べている…

紹介 ネアンデルタール人は私たちと交配した

ネアンデルタール人は私たちと交配した (文春e-book) 作者:スヴァンテ・ペーボ 文藝春秋 Amazon ネアンデルタール人のゲノム解析でノーベル賞を受賞したペーボの著書。2015年の著書なので今はさらに進展していることだろう。 もともとエジプト考古学に興味が…

紹介 文にあたる

文にあたる 作者:牟田都子 亜紀書房 Amazon 論文がアクセプトされても、最後の一仕事となるのが著者校正である。これが忙しいときに限って着弾して、48時間以内に返送してくださいと来る。誠に腹立たしい。 そういうわけで、いままで校正という仕事について…

紹介 武器を持たないチョウの戦い方

武器を持たないチョウの戦い方: ライバルの見えない世界で (新・動物記 2) 作者:竹内 剛 京都大学学術出版会 Amazon 実験材料としてチョウはとにかく難しい。行動圏が広いから野外では継続的に研究できないのが普通である。たいていの人はモンシロチョウやイ…

紹介 ようこそ地球さん

ようこそ地球さん(新潮文庫) 作者:星 新一 新潮社 Amazon 紹介するまでもなく星新一のショート集。世界観もさりながら文章のスピード感と無駄のなさに感心する。時代のせいか本書は陰鬱なストーリーが多く読み進めるのが辛かった話もあるけど、なんとか読…

職場復帰

六月上旬から八月いっぱい休暇をいただきました。ガッツリ体力を削られました。まだ全く本調子ではないですが(今日のPCRでも分量間違えまくり)、ぼちぼちやっていこうかと思います。 最近、自分は本当はなにがやりたいんだろうと考えます。ともかく、年末…

紹介 コーヒーの科学

コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか (ブルーバックス) 作者:旦部幸博 講談社 Amazon 植物学、含有成分、トレードの歴史、ドリップ方式といった、コーヒーのすべての分野を網羅する意欲的な本である。マニアックな知識にクラクラしながら読み進…

紹介 ケーキの切れない非行少年たち

ケーキの切れない非行少年たち(新潮新書) 作者:宮口幸治 新潮社 Amazon 過去のベストセラー。自分に直接関わらないことなので気楽に読みすすめることができた。罪を犯す少年が周囲の状況を正しく認知することができない障害を持っていることがよくあるとい…

街中

先月に引き続き休養中です。今日はスケッチをしました。 洋風の定食屋に入ったら中身はラーメンばかりの中華でした。すごくしょっぱい。外装だけだったか。少し後悔しました。

紹介 音盤紀行

音盤紀行 1 (青騎士コミックス) 作者:毛塚 了一郎 KADOKAWA Amazon 私の最近の書評が小難しいという感想をもらったので今回は漫画の話。最近は店頭の漫画も知らないものばかりなのでなかなか読めないが、衝動買いすることもある。最近の漫画では『ウマ娘』…

紹介 性の進化史

性の進化史 (新潮選書) 作者:松田 洋一 新潮社 Amazon Y染色体の由来と退化について述べた本である。細胞遺伝学の知識がいるので読みこなすのが大変だったが興味深い内容だった。 現代人は精子の数が激減しているという。進化を学ぶ者としては一夫一妻が一因…

紹介 魚毒植物

魚毒植物 作者:盛口 満 南方新社 Amazon 毒を水に流して魚を取る漁法がある。かつては全国にあったらしいが、無差別に水圏生物を殺すので現代では禁止となっている。この本は琉球列島を中心にリサーチしてどのような植物がどのように魚毒に利用されていたか…

紹介 津田梅子

津田梅子: 科学への道、大学の夢 作者:古川 安 東京大学出版会 Amazon 正直なところ津田梅子は津田塾の創始者という程度しか知らなかったが、この本でだいぶ考えが変わった。生物学者としての素養を持ち、染色体地図のモーガンの薫陶を受けて共同研究をして…

紹介 フォン・ノイマンの哲学

フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔 (講談社現代新書) 作者:高橋昌一郎 講談社 Amazon この本はノイマンの理論は最小限に、彼の社会とのつながりや人間関係、政治的活躍に焦点をあてた(ややゴシップめいた話も多い)読みやすい新書であり、WWIIや…

紹介 そもそも島に進化あり

そもそも島に進化あり (生物ミステリー) 作者:川上 和人 技術評論社 Amazon 筆者は鳥類学者ということで、島しょ部での鳥の進化に期待して購入してみた。一読した感想は・・・ちょっと期待したものとは違うかな。このタイトルだと正当な島嶼生物学を想像する…

紹介 図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか?

図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか?: 生きものの“同定"でつまずく理由を考えてみる 作者:須黒 達巳 ベレ出版 Amazon 自分の専門でも「なんとなくこうだから」という説明をせざるをえないことがある。学生と一緒の野外採集で「こういうのはいかにもEote…