紹介 巨大おけを絶やすな!

巨大おけを絶やすな! 日本の食文化を未来へつなぐ (岩波ジュニア新書 962)

 小豆島の醤油は本当にうまい。四国に住んでいるからそれはよくわかる。しかし、発酵過程に伝統的な木の樽を使って熟成している蔵は全国的に少なくなってしまった。この本では醤油の蔵元が使っていた桶が破損してから、桶を自分たちの手で再生して地域おこしをする過程がいきいきと描かれている。とはいえ言うは易し、行うは難しで、巨大樽をイチから作るとなると最初は技術習得から始めてとんでもない時間がかかったはずである。しかし、何個か桶を作っているうちに制作に慣れてきて、全国から桶を復活するプロジェクトを起こすまで成長させたとある。本当にすごい。まずは地元の人を動かすことがとてもむずかしかっただろう(高齢化しているし)。わざわざ品質にむらの少ないステンレス製の桶で醸造する機材を導入したのに、改めて木桶づくりに参加するモチベーションは当初は決して高くなかったはずである。

 発酵は日本の食文化に根ざしたもので、生物学や農学に関係が深い。身近なカビのちからを再発見できる好著である。