紹介 文にあたる

 

文にあたる

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 論文がアクセプトされても、最後の一仕事となるのが著者校正である。これが忙しいときに限って着弾して、48時間以内に返送してくださいと来る。誠に腹立たしい。

 そういうわけで、いままで校正という仕事について考えたことはなかったが、この現役校正者のエッセイを読んで見方が変わった。単に文字の正誤に留まらず、背景にある事実のウラを取ることも大事な仕事なのだと。そしてそれは半端なく大変なことだろう。誤りを見逃すのは「落ちる」と言ってぞっとするらしい。

 だいたい作家は思いつくまま筆を走らせるわけで、それを一つ一つチェックしていたら普通は身がもたないはずで、それをこなせる人が校正者として生き残るのだろう。

 ここまで書いて、本書に照らし合わせて自分でも真似事をしてみると、

  • 最後の一仕事→最後の仕事?(用例確認)
  • 着弾→(用例確認)
  • 48時間以内に...→カギカッコに入れるか
  • 留まらず→(漢字確認)
  • 背景にある事実のウラを取る→ウラを取る
  • 大事な仕事なのだと→大事な仕事なのだ
  • ぞっとするらしい→(記述を確認)
  • それを一つ一つ→文章を一つ一つ
  • 本書に照らし合わせて→本書を参考にして

......嫌になってきた。自分の文章でもこの有様だから、他人の文章の校正は本当に苦労するだろう。

 凡人には無理なこの世界。このエッセイは校正の奥深い世界を面白く提示してくれる。細かいところまで神経の行き届いたおすすめの一冊である。