on the other hand

英文を書いていていつも困るのは、日本語の「一方で」を表わす適当な言葉がないことだ。

 

On the other hand

 

はよく使いがちだが、私が英文校正で直されるワードの上位ランキングに入るだろう。

 

× Mites are so cute. On the other hand, spiders are far from cute.

ダニはかわいい。一方、クモはかわいくない。

 

上のように日本語の「一方(で)」のつもりで書くとまず直される。But, howeverなんかにしろといわれる。

 

Mites are so cute. However, spiders are far from cute.

Mites are so cute, but spiders are far from cute.

ダニはかわいい。しかし、クモはかわいくない。

 

なんやねん。そしたら on the other hand はいつ使えばええねん。オンラインの辞書サイトから拾ってみよう。

 

(On the one hand) food was abundant, but on the other hand water was running short.

 食べ物は十分だ。一方、水は不足してきた。

 

Peter is very talented. On the other hand, he’s also very lazy.

ペータは才能がある。一方で、彼はすごいなまけだ。

 

 おわかりいただけただろうか(何をだ)。

 

最初の私の例はダニとクモという全く異なるものを比較しているのに対し、後の辞書の例は一つの状況や人のある面と別の面を比較しているのである。On the other handは原則後者の場合しか使えないと先生はおっしゃる*1

 しかし、よく見てみると、上の辞書の例文の1番目は on the other hand はなくても意味は全然通じるし、2番めは butで置き換えればよい。

 というわけで、on the other hand を使わなければならないような場面は相当少ない感じがしている。とはいえ、つい書いちゃいますね。

 

 In contrast, by contrast, on the contrary などあるが、これも結局校正で直される。辞書を眺めると、

 

He is talkative and funny, whereas his father, by contrast, is solemn and quiet.

彼はおしゃべりで陽気だが、彼の父親は対照的に物静かで無口です。

 

 これなんかは私が言いたいことに近いかもしれないが、これなら別にby contrastなど入れずに下の文にしてもよいだろう。

 

He is talkative and funny, whereas his father is solemn and quiet.

彼はおしゃべりで陽気だが、彼の父親は対照的に物静かで無口です。

 

 そういうわけで、however, but, though(although), whereas(while), similarly などのシンプルな接続詞や副詞を柔軟に組み合わせて、お望みの意味を出すしかないというのが今のところの結論である。

 

 

それにしても……こういう細かいところを追求して文章をいじくると、元よりどんどん不自然な感じになっていく気がするのはなんなんでしょう。

*1:グレン・パケット『科学英文の英語用法百科』京大学術出版, 2004