書評

なぜ科学はストーリーを必要としているのか──ハリウッドに学んだ伝える技術

 この本は、科学にもストーリーの構成が重要だ、ということを書いた本です。

 書店ではプレゼンテーションの技法について書いた本が大量にあります。そして、どうしたらプレゼンが分かりやすくなるかということについて、たくさんのノウハウがあります。しかし、この本はそれらの本とは一線を画しています。様々な研究例に基づいて「そして(and)」「しかし(but)」「したがって(therefore)」ーABTーという順で配置するとそれだけでストーリーがわかりやすくなる例を紹介しています。したがって、無味乾燥なビジネス本とは異なり、まるで物語を読んでいるような知的興奮が得られるところがこの本の魅力です。

 この本のキモが上記の ABT システムで、上の段落もそのように構成しています。文の途中でABTを配置すると理解が進むということです。そして、 映画の話がたくさん出てくるところもかなり特徴的なところで、分量の割に読んでて飽きません。したがって、この本は論理的なプレゼンとか執筆に興味を持ってる人に対してはオススメです。

 科学をストーリーとして見る考え方は、教授からハリウッドに行ったという筆者の異色の経歴が役立っています。公開シンポジウムでもっとストーリーを重視するように演者に進言して渋い顔をされたエピソードも興味深く読みました。(この段落はABTではないな)