卒論の考察が書けないたった一つの理由

(ブログのブームはとうに去り、アクセス数が減って淋しいので、ライフハック的な見出しにしてみた。)

 

 この時期は多くの原稿を抱える。結果まではまあまあ書けているのに、考察はめちゃめちゃになる人が多い。そういう状況は大抵、考察そのものが悪いのではなくて、

 

序論の目的が書けていない

 

からである。

 

次の例は着眼点が書いていないので、論文の目的もよくわからない。よって考察は書けない。

 

序論

日本にはいろんなトンボがいる

A種は北国に分布し、夏になると四国に飛来する。

一方、B種は四国に定着している。

本研究ではいろんな温度で2種の生活史を調べた。

 

結果

25℃条件でA種とB種の発育速度に差があった。

30℃では差がなかった。

 

考察

(なに書こう・・・)

 

本研究を通じて、25℃では差があり、30℃では差がないことが明らかになった。← 結果を繰り返しただけ。

 

改善案として、序論に少し着眼点を入れるだけで書きやすくなる。以下の赤字は著者が当たり前と感じているので書いていないのかもしれないが、読み手にとってはそうではないので、きちんと書き下さないといけない。

 

序論

日本にはいろんなトンボがいる

A種は北国に分布し、夏になると四国に飛来する。

一方、B種は四国に定着している。

温暖な四国にいるB種のほうが、北国がルーツであるA種よりは高温域での発育がよいと予想した(引用)。そこで、

本研究では2種の生活史をいろんな温度で調べた。

 

結果

25℃条件でA種とB種の発育速度に差があった。

30℃では差がなかった。

 

考察

本研究ではB種のほうが高温域では発育がよいと予想した。25℃ではその予想と合っていたが、30℃では予想とは異なった。この傾向は一般的に知られている例(引用)と異なる。

    30℃で予想が外れた結果として考えられることは、・・・

 

 

このように、多少書きやすくなる。もちろん上記の予想は適当であり、現実には予想の根拠をしっかり書くことは大切である。これには日頃のリサーチの積み重ねがものを言う。根拠が十分あれば議論に厚みも出るが、乏しいとただの憶測になってしまう。

 

考察では序論で提起した予想にYESかNOで答えるもの。そのためには予想に至る経緯そのものが十分説明されていることが必要だ。そして、卒論とはいえ論文だから、自分の結論は「何々である」と自信を持って言い切ろう!

 

まとめると、卒論の考察に悩んでいる人は、考察そのものではなく、序論の構成が本当にこれでいいのか、また行き詰まっている部分が序論の問題提起とズレていないか、指導教員かだれかに一度確認してもらうほうがよい。未完成の状態で相談するのが恥ずかしいのはわかるが、それであなたの価値が下がることはない。

 

 

あ、あと銅鉄実験はやっぱりカッコ悪い。

 

序論

日本にはいろんなトンボがいる

A種は北国に分布し、夏になると四国に飛来する。A種は25℃でよく発育することがわかっている(fdaslk, 2010)。

B種は四国に定着している。しかしB種は25℃でよく発育するかどうかわかっていない。

そこで本研究ではB種の生活史を調べた。

 

結果

25℃条件でB種はよく発育した。

 

考察

本研究を通じて、B種は25℃でよく発育することが明らかになった。

過去の研究(fdaslk, 2010) でA種は25℃でよく発育することがわかっている。

B種はA種と同様、25℃でよく発育することを示すものである。

 

・・・たしかにこういうデータが必要なことはあるけどね。

 

 

最後になるが、実は私も考察は大の苦手である。投稿論文では考察の構成がおかしい、わかりにくいとよく指摘される。話が大きすぎても妄想になるし、小さすぎるとつまらないし、さじ加減に頭を悩ませるところである。脱稿前は一番暗く感じる。お互い頑張ろう。