帰国

 二日酔いでなにをする気力もなく、出発の5時間以上も前に空港に到着して虚空を眺めていた。
 平和について考えないかというおじさんが話しかけてくるけど、徹底的に無視する。
 おみやげを買い忘れていたことに気づき、セブンイレブンでインスタントラーメンとお菓子を買う。あとおみやげ屋さんでなにがしかを買う。


『キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか』北尾トロ

 空港のツタヤで買ったエッセイで、旅先で少しずつ読んでいた。
 小規模だが勇気のいる数々のチャレンジに著者が挑んだ記録。

・電車で知らないオヤジに話しかけて飲みに誘う
・電車でマナーを守らない乗客を叱り飛ばす
・知人に貸した2千円の返済をせまる
・公園の子供たちとふれあおうとして声をかける
・20年前に好きだった人を呼び出して好きだったと告白する
・まずい蕎麦屋で味の悪さを指摘する
・馬券売り場でスポーツ新聞で席取りするオヤジに自分の着席権を主張する
・人前で自作の詩を朗読する
・母親に恋愛時代の話を聞きに行く
皐月賞に30万円を一点買い

どれもこれも妙にリアリティーがある。
電車で知らない人に話しかけて一緒にお酒を飲むというのがこんなに難しいとは思わなかった。
もちろん、仕事とはいえ実際にやってしまう著者はすごい。
そういえば、中島義道も同じことを繰り返す駅員のマイクをとりあげて「あなたうるさいですよ!」と一喝したらしいし(『うるさい日本の私』)、こういうことを僕もやってみたくてウズウズすることはあるけど、やることはないだろうな。多分一生きっと。日常に逆らうのはすごくエネルギーのいることなんだ。この本を読んでよくわかった。

 明日の場所移動のため、また初日と同じホテルに宿泊している。こんどはネットがつながる。
 テレビをつけたらポニョをやっている。