コクゾウムシから見る歴史

 

 縄文時代の日本や、その他の国や時代の遺跡から発掘された昆虫から、人々がどのような居住環境や食生活をしていたのかを推定する内容。実にロマンあふれる内容で感銘を受けた。とくに、コクゾウムシについては世界的に分布しており普遍性があるため重要な材料だそうだ。無知ながら本種は米だけではなくクリや芋も食べるそうで、圧痕の個体の体サイズが南北に分断していることから東北人と西日本人の食生活の違いを解明する様はもはや進化考古昆虫学とでもいえるだろう。著者が認めているようにたしかに少々昆虫学的には訂正したい部分もあるが、それは些末なことである。ダニについてはあまり圧痕の資料として重要ではないようで、それが少々残念である。