- 作者: 林宏樹
- 出版社/メーカー: 淡交社
- 発売日: 2011/03/19
- メディア: 単行本
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風呂屋がないとつまらない。先日のNHKで、気仙沼での銭湯が被害にあって漁民の寄り合い場所がなくなったというドキュメンタリーをやっていた。銭湯はコミュニケーションの場として成立しているのだ。
この本は銭湯マニアの偏愛が感じられるいい本だと思う。カラー写真が多いのもうれしい。
・のれんの図案見本ギャラリー
・のれんの種類:京都式、大阪式、東京式
・屋号ランキング
・電気風呂の歴史
・タイル絵とペンキ絵
・銭湯で見かける体重計のメーカー
・経営者に占める石川県人比率
・昭和39年の組合加盟銭湯一覧
など、(一生知らなくても困らないような)情報が惜しげも無く開陳されている。
各章では、
京都のタイル絵の特徴としては、大きく二点あり、ひとつは脱衣場の浴室入り口部分に取り付けられていることが多いという点。もうひとつは、東京でよく見られる金沢の鈴栄堂というメーカーのタイル絵がないという点だ。
といった、「今度いったら見てみよう」という小粒な情報が多く、それがかえって魅力になっている。
鏡広告が男湯と女湯で違っている(男は理髪店が多く、女は美容室や化粧品が多い)ことなど、よく調べるものだと感心した。ところが、銭湯の浴場広告は立命館大の卒論にもなっているということで二度感心した(この著者も、よくそういう卒論が存在することをつきとめたと思う)。
「データで読む京都銭湯」の章は力が入っている。京都の銭湯がどの程度減っているかを実数で調べたもので、力作である。欲を言えば、グラフを使ってもらうともっと見やすかったのではないかと思う。データの分析を通じて、全国レベルと比較して京都の古い街では銭湯がよく残っていると結論している。ただ、やはり減少傾向は止められないように思える。
いやはや、京都の銭湯は思ったよりずいぶん奥が深いものだとわかった。
わたしがいま住んでいるところでも、実はめぼしいところを2,3軒見つけているのだが、自宅から距離が遠いのと車の置き場が少ないのが難点でまだ行っていない。一軒は「お湯あります」という魅惑的な札までかかっているので、廃業しないうちにぜひ行ってみたいと思っている。
今日のひとこと
人間洗濯機は心の垢まで落としてくれるような気がする。