千人計画

 新聞記事。中国が日本の研究者を絡めとっているのは前からだし、なにを今更スクープぶっているのかという思いである。

 私はむしろ大方とは逆で、水の合う研究者ならどんどん向こうへ行った方がいいと思う。向こうもこちらに来てもらえばよい。中国には二回ほど訪問させてもらったが、しかるべきポジションにいれば、あと設備の使い勝手の多少の違いに目をつぶるなら、待遇は相当よさそうだ。ただ、上層部の成果物への貪欲さは相当大きそうだったので、期待外れと判断された場合はどうなるかわからない。私には務まらなさそうだが、どのみちいまのところ"利用価値"もない。

 はっきり言って日本の研究者の待遇は悪すぎる。たとえ旧帝大であっても。ちっちゃいパイを科研申請で分け合うくらいなら、大きなパイを(少なくとも最初のうちは)無条件にくれるほうにいくのは研究者として当然の心理だ。おかしい?なら逆に、なぜ40人以上も向こうに行っているのかについて説明してくれないか。

 今回の件がいけないことだと思わないが、私はモラル違反が研究者を止める抑止力にはならないと思う。ノイマンオッペンハイマー、シラード、アインシュタインチューリングだって酷いやつだと思う。しかし、科学に与えた成果は別に考えるものじゃないか?

 日本政府は制限を設けるという。しかし、ことの本質は単純で、日本の待遇が悪すぎるということだ。優秀な学生がほとんどマスターまでで卒業するのも、日本で未来像が描けないせいだ。そして海外にも行けない、というか、行くという発想がない。こちらの"雨漏り"をなんとかしないと、成果のある人ほど"じゃ中国じゃなければいいんですね"ってことで、いずれ日本はガラパゴス化すると思う。いや、もう手遅れかもしれない。

 正月早々くだらない記事を見て腹が立ってしまった。とにかく、中国や韓国に協力したら悪という最近の風潮には全く賛同できないが、自分にはどうすることもできない。アメリカで同じ成果を挙げたら万歳するくせに。