卵泥棒のカエル

Post-mating clutch piracy in an amphibian
Vieites D. R., Nieto-Roman S., Barluenga M. et al.
Nature (2004) 431: 305-308

 ヨーロッパアカガエル(Rana temporaria)のオスは、他のペアによって作り出された卵塊を"略奪する"という習性をもつことが明らかになった。アカガエルではメスが産んだ卵塊にオスが精子をかけることによる体外受精が行われるが、ペアが立ち去った直後に他のオスがやってきて卵塊を抱きかかえ、精子をかけるという。ひどいのになると、まだオスが精子をかけている最中の卵塊を抱きかかえて持ち去り、自分の精子をかけるという。略奪したオスは、高いときで100%近くの受精を成功させる。この性質は遺伝的に固定したものではなく、普通にペアを形成したオスが、翻って略奪をしでかすこともあるという。また、略奪された卵塊中の卵は、略奪されない卵塊のものより、受精率が高くなる。
 このカエルでは、実効性比(operational sex ratio)*1がオスに偏っている(すなわちオスがあぶれる)。このようなオスあまりの状況で、略奪するオスは選択上有利になったのだろう。またメスのほうはといえば、卵塊の受精率が上がるうえ、多くのオスによって受精されることで遺伝的不和合の危険を減らせるらしい。このカエルは性選択のモデル生物となるだろう!

 というような内容だ。写真は京都の瓜生山で撮影した同属のヤマアカガエル。このカエルでも卵ドロボウはいるのだろうか?

*1:ある時点において交尾できるオスと受精可能なメスの比率

+Emlen S.T. & Oring L.W. (1977) Ecology, Sexual Selection and the Evolutioin of Mating Systems. Science 197: 215-223.