ミカンハダニのオスどうしの喧嘩(動物行動の映像データベースmomoより)

http://zoo2.zool.kyoto-u.ac.jp/ethol/showdetail.php?movieid=momo041229pn01b
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 解説に補足すると、一般にハダニ類のオスは成虫化直前のメスを交尾前ガードをします(交尾前ガードをする一部のハダニ種で、先に交尾したオスの精子が有効であることが証明されています)。オス密度が高いと、メスと最初に交尾する権利をめぐって闘争することになります。
 映像で見る限り、ミカンハダニはかなりはげしい喧嘩をするようです。ササに寄生するイトマキハダニなども激しい闘争をくりひろげます。イトマキハダニでは喧嘩が激しすぎて、勝ったほうのオスも争っていたはずのメスをしばしば見失います。ススキスゴモリハダニというススキに寄生する種では、このようなオスの気性の激しさに地理的変異があり、オスの気性の激しい個体群では勝ったオスが負けたオスを殺して体液を吸うことが報告されています*1。写真はアラカシに寄生するカシノキハダニ(写真にはアラカシハダニとあるが間違い)で、これもオスの気性は激しい。写真では先住オスが定着オスの背後をとって攻撃しています。攻撃されたオスはしばらく動かなくなります。
 一方、私が実験に用いているナミハダニやカンザワハダニは、ここまで激しくはありません。しかし、オスはやはり前足を広げて相手を威嚇したり、追い払ったりします。
 なぜハダニのオスの攻撃性に種間・種内の変異があるか、という問題は進化的な問題として興味のあるところです。

*1:Saito, Y. (1995). Clinal variation in male-to-male antagonism and weaponry in a subsocial mite. Evolution 49: 413-417