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On the low heritability of life-history traits
Price T & Schluter D (1991)
Am. Nat. 45:853-861

 その筋ではちょー有名だがまだ読めてなかったやつ。レフェリーに読めと言われたから読んだ。
 生活史形質は形態形質より一般に遺伝率が低い。これに関して、以前は古典的なFisher's fundamental theoremの観点から解釈されてきた。すなわち、個体群が安定状態(適応度の山)に近づくにつれて適応度形質の遺伝分散はどんどん減っていってゼロになる、という説明だ。生活史形質が形態形質よりも遺伝率が一般的に低いのは、生活史形質にはより強いセレクションがかかっており、安定平衡点に近づいて相加遺伝分散がなくなってきているせいだ、という解釈が以前には一般的であった。これに対して彼らの主張では、それは当然な帰結なのだ、という。生活史形質はいくつかの形態形質に依存している場合が多いので、生活史形質の環境分散は、それに関与する形態形質の環境分散を吸い上げたうえに、形態形質にはかからない外部からの影響を受けやすいからだという。端的にいえば、生活史形質自体の遺伝分散がどうであろうが、環境分散が相対的に大きくなるために、生活史形質の遺伝率は形態形質よりも小さいのだ。このモデルでは一般に、生活史形質の遺伝率の大小と適応の山付近かどうかは関係ない、とな。フム・・・