繁殖戦略の数理モデル (動物 その適応戦略と社会)

繁殖戦略の数理モデル (動物 その適応戦略と社会)

感想:
 この本は動物の繁殖戦略をゲーム理論で解析する試みである。繁殖にかかわる行動、例えば交尾時間や交尾前後のガード期間などの決定はゲーム理論の状況になっている。つまり、他の個体がどんな行動をとるかによって自分にとっての最適な行動が変化する。第5章で紹介されるフンバエのオスの交尾時間の例をあげてみると、古典的な解析モデルでは、オスの交尾時間の最適値が、利用可能メスに対する探索の効率などによって決まるという結論である。古典モデルでは探索効率はどんな状況でも一定と仮定されている。しかし現実には他のオスの交尾時間や、それにともなう利用可能なメス密度の変化などによって探索効率が変わってしまう。著者は古典モデルを拡張してゲーム理論で解いている。
 この本は数式が多いが、ゲームの考え方になれてしまうと意外とすらすら読める。既存の有名なモデルをゲームモデルに拡張している例が多くて、とっつきやすい。個人的には第7章の交尾前ガード*1の話が面白かった。交尾前ガードのモデルはこれ以外にほとんど見たことないのだが、他にあるのだろうか?
 現在のモデル業界(?)はシミュレーションばっかだが、シミュレーションではほとんど現実に「合わせる」ことしかできないような気がする。その点、解析解ならパラメータの重要性がはっきり数式で出てくるので、現実に対する仮説がはっきり提示できる。このような解析解の重要性をもっと再確認してもいいと思う。

・・・眠いのであんまりまとまらなかった。

*1:メスの交尾期間が限られている場合に、オスがその前段階のメスを他のオスからガードする行動