歩道橋

 鉄道旅行のマンガ「鉄子の旅」を楽しく読んでいる。

 僕が思い出すのは大学1年のたしか冬休みのころ、青春18切符で九州を周遊していたこと。
 スケジュールもたてず、九州の在来線の本数の少なさをナメてたこともあり、にっちもさっちもいかず、ホテルもお金がかかるので、熊本の歩道橋の下で寝たことがある。たしか駅の構内は駄目だった。

 九州は、寒かった。
 北海道で生まれ育った私は、九州=真夏の沖縄くらいの単純化されたイメージを持っていたのだ。
 ましてや南九州の入り口たる熊本が寒いなどということは考えもしなかった。
 歩道橋の下はとりわけ寒かった。
 夜中に酔っぱらいのおっちゃんが「あーっ、死んでんのか?おいっ!」とか声をかけてきた他は、とくに何事もなくすんだと思う(しかし、あまりの寒さに場所を変えたのではなかったか)。

 ホテルに泊まることが多くなった今、もう一度、歩道橋の下で寝たいという願望もある。漫画家も失踪して人気が再燃したことだし、そういうのもあるかなあ、と。そのままその生活から戻れなくなったりして。そこまでいかなくても、駅のベンチで寝る「駅寝」みたいなのをしたいと時々思う。

 僕が思い出すのは、宿で知り合った仲間が「九州周遊切符」(特急が乗れる)なるものを持っており、九州に入るところから特急を乗りまわしていることだった。なにそれ。詐欺じゃん。

 たしか宮崎あたりで本数の少なさに根負けして別料金で特急に乗って、鹿児島から各駅で指宿まで行って、そこで砂風呂に入ったのだった。高千穂にも行った。ということは、高千穂鉄道にも乗ったはずだが、よく覚えていない。ただ、バスから見た日本画のような雲海と、酒が飲めなかったヒゲモジャの宿屋の主人のことはよく覚えている。