Fighting back against male-killers
John Jaenike
Trends in Ecology & Evolution
Volume 22, Issue 4, April 2007, Pages 167-169
 
 オス殺しのWolbachia問題。もっともシンプルなケースでは、感染メスと非感染オスが交配すると次世代のオスはつねに死亡する[つまり集団中に感染オスはいない]。感染メスは、つねに非感染のオスと「もどし交雑」されるので、感染メスのゲノムのやがてブラックホールに吸い込まれるように集団中から消えてしまう。
 ボルバキア感染が引き起こす適応度コストとして、次世代の死亡という直接的なものに加え、オスを作れないことで最適性比からずれるということがある(ここらへんの記述はよくわからなかった)。
 ここでオス殺しに抵抗性を持つ優性の突然変異を考えてみよう。この抵抗性の突然変異を持つメスからは抵抗性のオスが生まれ、それが感染メスと交尾することができる。つまり、感染メスのゲノムをブラックホールから救い出すことができるだろう。しかし、これまでの研究例では、集団中に抵抗性の遺伝分散は見つからなかった。
 
 ここで紹介されているHornett et al. (2006, PLoS Biol. 4, e283)の研究はオス殺しに対する抵抗性の地域変異を明らかにした点で興味深い。東南アジアのリュウキュウムラサキ個体群はボルバキア感染しても性比のゆがみを生じないが、モーレア(タヒチ)では同じ系統のボルバキア感染で性比がメスに偏る。Hornettらは、東南アジアとモーレアの雑種メスを作り、それぞれの系統のオスと戻し交雑を行って、それぞれの持つボルバキアを異なる遺伝的背景のもとで働かせるようにした。結果、モーレアの核を持つ系統はオス殺しを示したが、東南アジアの核を持つ系統はオス殺しをしなかった。この抵抗性の表現型は単一の優性遺伝の分離比と矛盾していなかった。
  
 じゃあなぜモーレア個体群では性比のゆがみに苦しんでいるかというと、まだ抵抗性遺伝子が広がっていないためだろう、という[こりゃ説明になってないよーな気もするが]。

[まだまだ議論は続くが私はここでギブアップ。すいません。ボルバキアの進化の話は難しい。]