文献調査をしていたら、研究員のTonyさんが「これ見たか?」と文献を手渡してくれた。ふむう。
Diapause incidence in the two-spotted spider mite increases due to predator presence, not due to selective predation
Kroon A et al. (2005) Exp. Appl. Acarol. 35:73-81

 うう、いつか出るかと思ったがやっぱり出たか。捕食者がいると休眠率が上がるという現象は以前に教官から薦められたテーマなのだが、そのときに食指が動かなかったのだ。ひとつには捕食者(カブリダニ)の飼育の難しさ。一つは予備実験で休眠個体・非休眠個体にあまり食われやすさや質的に差がないように思えたので、どう話を落とすかが見えなかったこと。そしてこれが最も重要な理由であるが、このテーマをめぐってpriorityをめぐる争いが上司の間であったこと。「あいつはこのテーマを盗ろうとしているんだ」なんて言われてヤル気は出ませんでした。

 少しイヤなことを思い出してしまった。本題に戻ろう。タイトルを見て僕が思ったストーリーは「捕食者がいると休眠率が高くなる。これは、休眠個体が捕食者に食われにくい(もしくは不味い)ので適応的な意味がある」というものだった。しかしどうも違うようだ。グラフを見た感じでは、休眠個体のほうがむしろ食われやすいようだ。
 まだざっとしか見ていないので、後でゆっくり読ませてもらおう。ところで、捕食者が被食者の休眠をinduceする話は水中のDaphniaなんかではよく行われているのだが、陸上生物ではほとんど聞いたことがない。その意味でこの研究は画期的で、こんなダニ学誌に載せるより生態学関係のLetterにしたほうがいいと思ったのだが。