COE公開講座

 八尾さんのアブラムシとアリの話。アブラムシはアリに随伴されているが、その利益とコストを定量的に計った実験の紹介。アブラムシがアリに随伴されているときには、捕食者密度が低くなることが野外実験によって示唆された。それと引き換えに、アリに随伴されるとアブラムシの成長が落ちる、というコストがあるという[1]。これはタッチの差で世界一になりそこねた発見だったそうだ。この至近的なメカニズムを甘露の成分に求めた。甘露の成分分析をした結果、アリがいるときには植物由来の糖(スクロース)やアミノ酸が甘露に排出されていることがわかったが、アリの随伴がないときにはそれらはほとんど排出されていない。すなわち、アリさんに何度も叩かれて消化不良を起こすのだという仮説を提示した[2]。質疑では、この排出成分自体が自然選択の結果であり、周囲の競争者・捕食者密度や、アリに食われるリスク((甘露を出さないアブラムシはアリに食われてしまう))によって変わるのではないか、という指摘がなされた。
 八尾さんは隣の研究室なのに、ちゃんとした話を聞くのはこれが初めてだった。一貫したストーリーでわかりやすく、内容も興味深かった。
1. Costs and benefits of ant attendance to the drepanosiphid aphid Tuberculatus quercicola. 2000. Oikos, April 2000, vol. 89, no. 1, pp. 3-10(8)
2. Ant attendance changes the sugar composition of the honeydew of the drepanosiphid aphid Tuberculatus quercicola. 2001.Izumi Yao and Shin-ichi Akimoto. Oecologia 128:36 - 43