社会性アリジゴク

 Nature最新号によると、オーストラリアの北東部で集団生活のアリジゴクが発見されたという。しかも、このアリジゴクは真社会性の特徴を完璧に保持しているらしい。カースト分化しており、女王アリジゴク、兵アリジゴク、働きアリジゴクなどが発見されるという。
 このアリジゴクは日本のアリジゴクと同様にすり鉢状の巣を砂地に作る。しかし、その巣の構造は複雑であり、通常3つ程度の部屋から成り立つ。一番深い部屋に女王アリジゴクいる。女王アリジゴクは「アリジゴク」と名は付くが、もちろんメス成虫(ウスバカゲロウ)である。ただし日本のウスバカゲロウとは異なり、翅は退化し、腹部が肥大しており、生涯100個程度の卵を産む。それらの卵から働きアリジゴク、兵アリジゴク、生殖虫(alate)が出現する。生殖虫がどのようにして分散し、コロニーを形成するのかはまだはっきりしていない。
 働きアリジゴクは一見クサカゲロウの幼虫に似ている細長い形態をしている。多くは巣の入り口のすりばちの部分に潜み、大きな獲物がすり鉢に落ち込んだ時に押さえつける役割をするが、時には植物上を徘徊して獲物を捕まえ、巣に持ち帰るという。
 兵アリジゴクは働きアリジゴクより一回り大きく、大顎のプロポーションが働きアリジゴクよりかなり大きい。すり鉢状の巣の入り口で大顎を開いた状態で待ちかまえ、主に寄生者(ヤドリバエの一種)を撃退すると考えられる。
 日本のアリジゴクの巣は単純な構造をしているが、これは社会性に至る過程の祖先的な特徴であるのか、それとももともと集団生活をしていたものが退化したのか、という点に今後興味が持たれる。また、注目すべきことに、このアリジゴクはシロアリなどと同じように、オスもメスも倍数体である。したがって社会性形成の要因としてHamilton流の血縁選択が働いたとは考えにくく、社会性の進化に今後議論を巻き起こしそうだ。


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