メモ

AKIMOTO, S. (2006) Inbreeding depression, increased phenotypic variance, and a trade-off between gonads and appendages in selfed progeny of the aphid Prociphilus oriens.>
Evolution, 60, 77-86.
 アブラムシにおける、近親交配の手法を用いた生殖腺と付属肢のトレードオフの検出。
 野外から採集した多くの有翅虫(産性虫)からメスとオスを産ませる。inbred処理では、各有翅虫が産んだ兄弟同士を交配させて卵を産ませる。outbredの処理では、オスを除去し、メスと別の個体群のオスを交配させて卵を産ませる。それぞれの卵から生まれた幼虫について、形態形質(tibia長など)と生殖腺を計った。
 全体として見た場合、inbred群はoutbred群よりもtibiaが有意に大きくなる一方で、生殖腺の大きさが小さくなる傾向が見られた(inbreeding depression)。また別の年に行った実験では、inbred系統において、卵サイズの影響を除去した後のtibia長と生殖腺の大きさに負の相関が見られた。幼虫は摂食しないので、形態の発育は卵の栄養に規定されていると考えられる。すなわち、tibiaと生殖腺の負の相関は卵由来の資源をめぐるトレードオフと考えられる。
 卵サイズや体サイズを横軸にとったときのtibiaや触角のアロメトリーを計ると、inbred群ではoutbred群より傾きが強くなっており、近親交配によって特定の形態形質が発達したことを示している。これらの結果は生殖腺と付属肢という全く離れた形質に現れるトレードオフと考えられ、アブラムシの形態進化に示唆を与えるものである。