紹介 豆くう人々

 

 著者は遠軽の豆専門店に生まれ、豆を愛し、あらゆる豆と豆料理を求めて世界を旅している。その偏愛たるや掲載されているだけで南米からアフリカ、アジアまで30カ国におよぶ。恐るべし。原住民の豆を中心に探索しているようで、これは大変な労力だっただろう。ベネズエラなど治安が悪い国にも行っており、そこまでするかと思う。こだわりは表紙を見てもわかる。各国の豆を配置したデザインはセンスがいい。

 内容を見てみると、各国につき10ページ程度の分量であり、たやすく読みすすめることができるだろう。紹介されている豆は日本人にも馴染み深いササゲ、インゲン、大豆が多いが、樹豆、ルピナスもある。ルピナスって食えるんだ。アンデスのルピナスはアク抜きのために浸水させてから煮込み、茹で汁を捨てて豆を袋に入れて沢水に1〜2週間つけておくという。随分手間がかかるものだ。アメリカ女豆というのもある。なんだそのひどいネーミングは。見た目が赤くて派手だから?

 世界では、比較的よくありそうな煮豆や素揚げ、豆ごはんのほか、臼でひいて粉にしたり、マメをゆでで皮を取りマッシュしてペースト状にして加工する食べ方が目立つ。ペーストをコロッケみたく揚げるのが旨そうだと思った。日本のソースをダボダボかけて食べたい。登場する料理について簡単なレシピが載っているのもうれしい。キツいと思ったものは

いなご豆を莢ごと水につけ、翌日ふやけた豆をちぎる。3日ほどおくとブクブク発酵してくるので豆の粉を足し、どろどろのドリンクにする。なお、7日おくと酒になる。(要約)

お皿に大量のオリーブオイルを入れる。ひよこ豆の粉を二杯入れ、混ぜる。さらに加えて混ぜる。ドロリとしてきたら味見して完成。(要約)

 あとは豆料理ではないが、パンにラードを塗って、その上に豚の脂身を乗せて食う習慣(ルーマニア)も少しきつい。

 たまにそういうのもあるが、だいたいの郷土料理は美味しそうである。

 ベネズエラやキューバの村には民営のジーンバンクがあり、土着のいろいろな豆を集めているらしい。チャベス大統領たちが推進していたらしいがその後援助は打ち切られたそうで、なんとももったいない。なにかの研究に活用できないものか。

 少し惜しいと思ったのは、本文に口絵の番号への参照を載せてほしかったところである。あとは、本題から外れるが、虫の研究者としては貯蔵豆につくマメゾウムシにもちょっとは言及してほしいところである。

 普段は豆を意識することはないが、よく考えれば豆腐、納豆、味噌、煮物、一昨日食べたひよこ豆カレーなど食卓には豆がいっぱいである。地元にはわかさいもという豆を芋がわりに使ったお土産もある。今後は食卓の豆を意識してみようと思う。