Have we overstated the tropical biodiversity crisis?
William F. Laurance
Trends in Ecology & Evolution
Volume 22, Issue 2, February 2007, Pages 65-70
 
 Wright & Muller-Landau (2006) の提唱した問題を論じている。W&Mは、データマイニングの手法を用いて、森林の消失ともっともよく相関するのは全人口密度ではなく農村部 (rural) の人口密度であると主張した(これは焼き畑によるものだろうという)。アフリカやアジアでは人口密度は増加したが、アジアなどでは都市化に向かう強い潮流があるので、都市人口が増え続け、農村部の人口は増えない。ゆえに、アジアなどの森林面積はそんなに減らない。だから生物多様性もそんなには減らないだろう。よかった。
 
 ・・・で、いいのか、という問題(原著読まないとなんともいえんな)。
 
 これに対する反論として、マダガスカルなど生物多様性ホットスポットを考慮してないとか、古い熱帯林とプランテーションを同じにカウントしているとか[カツラはこれは致命的だと思うが]、将来は発展途上国の一人あたまの消費量が増えてW&Mが推定に用いた相関の値そのものが変わるんじゃないかとか[これは当然ながらスルドイ]、彼らのモデルでは森林が「縮む」と仮定されているが実際は「分断」されるから絶滅率はもっと高いじゃないかとか、グローバリズムの影響を考慮してないとか、まあいろいろ。このレビューの著者も結論で"overly optimistic"だと言っているが、現実的には政治的な関心の中で研究を進めなくてはいけないという事情も理解できるとしている。
 
 まあ、一言でいえば感情の問題ですな。どこまで許せるか、っちう。