論文捏造

22:00〜22:50 NHK衛星第1
BSドキュメンタリー
「史上空前の論文捏造〜誰も見抜けなかった最先端科学の”成果”」
ベル研究所のヘンドリック・シェーンが捏造した「超伝導」研究・・・
捏造事件の裏に潜む、科学界が内包する構造的な問題点・・・

 この番組は面白かった。地上派で再放送してくれないだろうか。最先端の研究で捏造が行われていることの恐ろしさを見せつけられた。おなじ分野の研究者はシェーンの結果に疑念を持ちつつも提訴まではいたらない。あるとき雑誌のeditional boardにかかった電話は「2本の論文をよく見ろ」という。編集者がよく見比べてみると・・・細かいノイズまでぴったり同じグラフが使いまわされている。
 これは唖然とする映像だった。というか、こんなの気づいた人はいっぱいいたはずなのだが。数年間シェーンの結果を追試した研究者は怒り心頭だった。いまシェーンはドイツの田舎町でひっそりと過ごしているという。ある科学者は「現在の科学は純粋に知的好奇心を満たすものではなく、金がからむようになっている」と嘆いていた。しかしいくら競争が過酷とはいえ、捏造は断罪されるべきだろう。

 進化生態学で有名なAnders Moller教授も弟子のデータを改ざんしたという疑惑を持たれている。植物のFA*1に関する論文(Oikos掲載)は、その後撤回となったようだ。
http://io.uwinnipeg.ca/~moodie/thesis_manual/Moller.pdf

*1:fluctuating asymmetry:体の非対称性はその個体にかかっている遺伝的・環境的なストレスを表しており、非対称性の小さい個体をメスが選ぶ過程で対称性が維持されるという仮説。FAがbody conditionsの偽りのない信号といえるかどうかが焦点となる。