事実?

 ライティングの本では事実と意見の違いをはっきり区別して書きなさいというけど、よくよく考えるとその境目はあいまいで、どこからどこまでを事実として認めていいものかどうかよくわからなくなる。論文を書くときには気を使っているつもりでも、指摘されてみると確かに事実とは言えないかもしれないと考え直すこともある。論文の審査では、これらのちがい(事実か意見か)という見解がミシミシ音をたてている。「それは事実でしょう」「いや、単にあなたの意見でしょう」という具合である。
 天動説が正しい時代には、天動説は十分な根拠がある"事実"として扱われたのだろうが、現代では天動説に立つ人は相当少ないはずである。ただ、天動説に立つ人に「貴方の立っている地面は存在しませんよ」と言っても無駄だろう。こういうのはお互い様であり、私のそもそもの立っている地面が実は存在しないのかもしれない。異なる地平に立つ者どうしで議論を交わして共感することの難しさよ。

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