京大の加藤真さんが集中講義にいらしてます。忙しくてなかなか講義を聞けないのですが、今日の午後はゆっくり聴くことができました(正直いえば、南方熊楠なんて加藤真さんがいなけらば一生知ることのない)。多様性や保全を研究している人は多いですが、自分の実体験や日本の古い文献に裏打ちされた講義をできる人はなかなか少ないんじゃないでしょうか。今日はアリ植物マカランガの共生系、ラオスの水田生態系。D論(リーフマイナー)の話。日本各地のシカの異常増殖など。シカの増殖で芦生などの原生林の林床が丸裸になっている写真は衝撃でした(マジっすか・・・という感情)。講義のところどころに挿入される日本固有の科や属についての蘊蓄。ああ、なつかしいなあ、と思いながら聴いていました(2年生のときゼミを1年間受けていた・・・瀬戸の実習も信州の実習も行きました)。どこかで「育てたいのは真のナチュラリスト」と書いてあったのを見たと思うのですが、果たして京大では育っているのでしょうか。講義中に次々沈没していく後輩たちを見るにつけ、どうも北大生では頼りないようですね。私自身も、講義の感想で「オオバアサガラ」というべきところを「アサガラ」と言ってしまい、芦生にアサガラはいない、といたく注意をうけました。加藤ゼミに出ていた僕らの学年はどうもやはり不肖のようです。
 うちの研究室は「動物生態学」の看板をかかげながら、保全や多様性から一番遠いところにいる研究室なので、こういうゼミがあってもいいのではないかと思います。しかし、加藤さんの域に達するのは至難でしょう。
 その昔、加藤ゼミに刺激を受けたにもかかわらず、私自身の興味はもっとも遠いところにきてしまったような気がします。かかずらっている統計の結果:「遺伝共分散は有意だが、遺伝相関は有意でない」。どう解釈したものか、どう落としどころをつけるか、私としてはとても悩ましい問題です。そのまえに、プログラムをもう一度点検しなくてはなりません。
 
 明日は↓
日本の渚―失われゆく海辺の自然 (岩波新書)
の話です。
 
061006追記:加藤さんとの個人的な話の中で、いま福井の中池見湿原はバイオトープになっていて(これは数年前に私が調査がてら単独で訪れた際に愕然とした点)、さらになんと水を下から循環させているそうです(もう湿原じゃないじゃん)。こういうアホアホな事業をやめないと、本当に手つかずの自然がなくなるぞ。電力会社による開発がストップしたというのが唯一の救い。