科学者という仕事―独創性はどのように生まれるか (中公新書 (1843))
 研究者というものの仕事を学生に紹介する内容なのだが、研究者や職人・芸術家などの人の警句をふんだんに引用しており、うんうんと共感する部分があると同時に、研究者としての意識もひきしまる気がして面白かった。
「研究者は「ない才能で勝負する」」
「すっきりと消化できない課題は私にとって駒作りに取り組むエネルギーとなってきた」
「好奇心に必須なものは自由」
「何をやるかより、何をやらないかが大切だ」
「引き際が肝心」:「三十代半ばをすぎても芽が出ない人は、思い切って専門分野を変え、チャレンジしてみるといいかもしれない。」「研究は極めることだという思いが先に立って、ついやりすぎてしまうことがある。その結果、・・・袋小路にはまってしまう。」
「投稿する雑誌のレベルを落としても、査読のレヴェルが落ちるためにとんでもない誤解が生じうるから、必ずしも論文が採択されやすくなるとは限らない。」
 個人的に面白かったのは朝永振一郎湯川秀樹に対して感じた劣等感の章であり、これはレベルは違えど私の感情と通じるものがあると思う。残念ながら疲れてきたので、ここで詳しくは引用しない。
 本文の記述は著者の豊かな見識に裏打ちされている。研究をこれから目指そうとする人は一度は読んでみるといいと思う。