文献

Mousseau, TA (1991) Geographic variation in maternal-age effects on diapause in a cricket. Evolution 45, 1053-1059.

 いまは昔の論文となってしまったが、コオロギの齢が休眠にどんな影響を及ぼすかという研究。二化性の個体群では、一世代目の親が産んだ卵(2世代目)は、早い時期には世代を完了できるのに対して、遅い時期には完了できないということがある。したがって単純に考えれば、早い時期には直接発育(direct development)の卵を産み、遅い時期には休眠卵を産むほうがように進化した可能性がある。この研究では、一世代目の母親の齢の効果に注目し、老齢になるほど休眠卵を産むと考えた。また、野外で必ず休眠してしまう一化性の個体群ではそのような性質は進化しないと考えた。
 実験自体はシンプルで、化性の異なる個体群をたくさん取ってきて、産んだ順番に何十個かずつ採卵して、その休眠率を反復測定分散分析にかけるという。結論としては、まあ予想されたとおりで、二化性の個体群では老齢になるほど休眠卵を多く産んだが、一化性ではその傾向は見られなかったという内容。
 一化性個体群と二化性個体群に着目し、予想された方向に反応が見られたというのが自慢。しかし、よく考えれば、もし親世代が日長や温度などの信頼おけるcueを感知して適切に産み分けることができれば、齢の効果などはそもそも必要ないとも思える。そこらへんをついた論文というのはまだ無いように思う。