オーバーシュート

 山中教授の動画を見たのですが、その中の「オーバーシュート」って何?と不勉強ながら思ってしまい、説明を聞いてみた。


「オーバーシュート」の定義とは? 専門家会議が示す

 

 2〜3日のうちに数が倍増というのは、どんなものでしょう。簡単な計算ですからやってみましょう。面倒な人は式をとばしてください。

 

 \frac{dx}{dt} = ax - bx

だたし、t は時間、x は個体数、a は瞬間出生数、b は瞬間死亡数。a, b >= 0。

 \frac{dx}{dt} = (a - b)x

 \frac{dx}{dt} = rx,  ただし r = a - b

 \frac{dx}{x} = r dt

 \int \frac{dx}{x} = \int r dt

 \log{x} = rt+C(積分定数)

 x = x_{0}e^{rt}, ただしx_{0} = e^{C}

 

 x_{0}が初期個体数、rが瞬間的な増加率を示します。r = a - b > 0 なら指数増殖です。個体数が倍になる時間は倍加時間と言われ、最後の式の左辺を 2x_{0}にすることで求まります。 x_{0}を約分して、

 2 = e^{rt}

 \log{2} = rt

より、

 t = (\log{2})/r = 0.693/r

あるいは

 r = (\log{2})/t = 0.693/t

 

つまり、3日で倍になるという場合、

 r = 0.693/3 = 0.23

2日の場合は0.35となります*1。これらの増殖率は農業で言えば温室ハウス内のハダニ、アブラムシなみの数字で、早急に防除しないととても太刀打ちできません。冒頭の定義で

欧米で見られるように爆発的な患者数の増加を示すが、2日ないし3日のうちに累積患者数が倍増する程度のスピードが継続的にみられる状態を指す

ということを述べていますが、確かに「倍増が見られる」状態になったらもう本当に手遅れです。目視できる前に防除しないといけないのですが、 有効な手段が「なにもしない」というのがもどかしいところです。

 逆に、オーバーシュートの限界値を設ければ(資料を見ていないのであるのかわかりません)、これまでの増え方からパラメータを推定してオーバーシュートまでの時間が求まるわけですね。

 星新一のSF『午後の恐竜』で、パノラマ視現象を見た科学者が「恐ろしい計算でやる気にもなりません」と言うわけですが、なんかそれを思い出してしまいます。

 

 

 

*1:一日を微小区間と見なしました。