旅とヤクザ

旅はいい。
見知らぬ土地に行くと新鮮な気持ちになれる。
旅の食事は楽しみのひとつだ。

旅先でふらりとドライブインに入ったりすると
その筋とおぼしき人たちが暗い顔して脱衣麻雀ゲームとかやっているのが見えて、まいったなこれはと思ったりする。
恰幅のいい店員が蝶ネクタイとかつけてるし、ここはそういう店だったのかと後悔する。
店を出るのは男がすたる。
千円もするスパゲティを頼んでみた。
店の壁紙はだいぶくすんでしまっているし、漫画雑誌もおっさんくさい、においもなんだかくさいやつしかおいていない。
カウンターの向こうにはダーツが見える。
妻も「なんだか暗い店だね」とかヒソヒソ言ったつもりかもしれないが声がすごく通る人なのでこっちをチラ見されて怖い。
すごく待たされて気持ち悪い色をしたのびきったスパゲッティが出てきた。
これがまたマズい。
どうやったらスパゲッティをこんなにマズくできるか教えてほしいくらいだ。
スパゲッティなんてゆでおきでもチャッチャッと塩を振ればそれなりに食べられるものではないのか。
くすんだ色の壁紙を見ながら、麺をもそもそすすっているとすごく悲しくなってきた。


そういう切ない思い出のほうが後でしみじみと思い出されるから、やっぱり旅の飯屋は下調べなんかしないほうがいいと思う。