殿様、いや、老中、もとい、過労気味のため、今日は休みをとった。ギャグもさえない。
 
 昨日、博士過程の院生とちょっとした種議論をした。どうも私の意図がうまく伝わらなかったようなので、考えを整理するためにここでまとめておこう。矢印はわたしの意見。ちなみに、どちらかというとあまりわたしは記載をしたくない方。議論の内容は適宜加筆。
 
彼の主張を要約するとこういうことだろう。
 
1.分子系統的に離れていて、異なるクレードの間に生殖隔離があれば種として認められる。
2.もし生殖隔離に加えて、外部形態にも差があるなら、これは別種として記載すべきである。
3.たとえ形態的に差がなくても、生殖隔離があるなら、遺伝情報そのものに基づいて記載すべきである(実際そうなっている?)。
4.(3.の根拠として:)系統樹のクレード間の枝の長さが種内レベルの何倍か以上離れていると種としては認められる。つまり、種内と種間では枝の長さがだいぶ違うから、そこから種か別種かは判別できる。

→ ええと、そもそも系統樹に関して、次の2つは同じような系統樹を描くだろう。(1)ラボでは交配可能だが長年地理的に離れていて物理的に出会えない場合、(2)分布が重なっているが生殖隔離が成立している場合。だから、系統樹と生殖隔離はあまりリンクしない話なんじゃないすか?
→クレード、というのは群レベルの話で、本来は個々の個体群で定義しないといけないのでは?いや、まてよ。個々の個体で定義しなくてはいけない?よくわからんな。
→ 生殖隔離に関して、交配実験に選んだサンプル個体群どうしはたしかに別種かな?でも同じクレードに属する別の個体群についてはわからないじゃん。
 そもそも、N個体群がある場合に、N(N-1)通りの組み合わせで雑種のにんせい(漢字がでない)を調べて、どのグループに属するか見なくてはいけないの?そしてそれと分子系統を照らし合わせなくてはいけないの(そんなことをしている人は、少なくとも僕らの分類群の世界では見たことない!)
→ 2.3.に関して、クレード同士が完璧に生殖隔離していて、その種記載に共有派生形質となっている外部形態や遺伝情報を使うならね。
→ 4.に関して、これじゃ議論が回っているんじゃね?じゃ、そもそもの種はどうやって決定すんの?
 
私が記載に懐疑的なのは:
・環状種みたいな場合はどうなるの?「種」というからには種とされるんだろうな。
・・ってゆーか、E・マイヤーの種の基準はまだ生きている の?
・つまり、種の判定にはどこまでやればいいのですか?
・そもそも進化の単位は個体(せいぜい個体群)以下というのならば、種とは一体なにものですか!?


 

その上で、
→ 種は特定のグループを区別するために便利なラベル。3になったら不便だなあ。
という意見に関しては部分的に合意。

 
 EvolveMLでの種論争が終結してから入ったので、デムパな人たちの論争しか見てないんですよね。バックナンバーを取り寄せようかな?でも音楽のベスト盤を聞いてもリアルタイムな感覚が起こらないのと同様、あまりピントこないのかもしれない。
 
 種議論&系統論に関しては初心者(そして上級者、というか深淵なる者にはなりたくない?)ですが、なにかコメントをいただけるとうれしいです。