文献メモ

Precopulatory mate guarding affects predation risk in two freshwater amphipod species
Anim. Behav. Volume 68, Issue 5 , November 2004, Pages 1133-1138
Rickey D. Cothran

 今日のゼミで紹介された文献。ゼミ自体はちょっといただけなかったが、論文自体は面白そうである。以下、ゼミ内容と要旨をかなり意訳。
 ヨコエビは交尾前ガード*1をすることで知られている。このガード時間はオスとメスのコスベネによってゲーム的に決定される。ガード時間決定のひとつの要因として捕食者の存在というものがある。すなわち、オスは交尾前ガードをすれば最初に交尾する権利を得られるが、目立ちやすくなってしまうため捕食者にやられやすいというリスクがあるだろう。この研究では、ガードのリスクを調べるために、2種類の捕食者(ヤゴとブルーギル)のそれぞれについて、単独のヨコエビ(オス・メス)、それにガードされてペアになったものを選ばせて、3つのうちどれを最も食うかについて調べた。
 すると、ヤゴは単独のものをオス・メスに関わらず好んだが、ブルーギルはペアになったヨコエビをよく選んだ。(すなわち、両方の捕食者がいる場合は交尾時間にトレードオフがかかる?)。いままでに、ブルーギルがいる池ではいない池に比べて交尾時間が短いという現象が観察されているが、これはブルーギルがペアヨコエビをよく選ぶために進化した性質なのではないかと推測できる。さらに、ブルーギルがペアを襲ったときには、ガードされたメスのほうをよく食う。したがって、ガード時間の進化には、捕食者を介したオス・メス間のコンフリクトが大きな影響を及ぼしているんぢゃないか。
 
 交尾前ガードをする時間は、他のオス密度の条件によっても変わってくるだろうし、なかなか興味をそそられる問題だ。山村さんの本はその問題をESSモデルで扱っていたのだが、品切れで図書館で探すしかないのが残念。
http://d.hatena.ne.jp/spidermite/20041121

*1:成虫オスが性成熟直前のメスをガードして、最初に交尾する権利を確保する性質。最初に交尾したオスの精子が使われるような生物で進化していると考えられる。わたしの実験材料であるハダニもこれをするのですよ。