The evolution of alternative parasitic life histories in large blue butterflies

Als TD, Vila RV, Kandul NP et al.
Nature (2004) 432: 386-390

Review:"large blue"とはゴマシジミ類のこと。ゴマシジミ類は旧北区に生息する。一般に一齢幼虫は他の蝶と同様に草を食うのだが、やがてアリによって巣の中に運ばれて寄生生活を営む。その寄生方法には2種類ある。ひとつは他の幼虫をむさぼり食うもので、日本にいるゴマシジミ・オオゴマシジミはこのタイプだ。もう一つはアリによって給餌されるものである(僕は知らなかった)。
 この研究では各地からとったゴマシジミをCOI・COIIなどで系統解析して、このようなタイプがどう進化したかを推定している。結論としては、給餌されるタイプは500万年前に捕食タイプから分岐した1クレードを構成する。また、給餌タイプの2種の間の遺伝的な分化はほとんどないので、同種かもしれないということ。推定祖先種は東の旧北区あたりに由来し、捕食タイプか捕食・給餌のミックスタイプのいずれかだが、系統樹の復元には給餌タイプの仮想種が必要になる。また、幼虫の食草についてきれいなクレードが形成されており、給餌タイプはリンドウ科を用い、捕食タイプはシソ科を用いるクレードとバラ科を用いるクレードがある。リンドウ科とシソ科を用いるのが祖先タイプと推定された。
 図を見ると、系統樹がかなりきれいでブートストラップ値も高いので、かなり信頼おけそうなデータに思える。このような結果をもとに議論するのはワクワクすることに違いない。系統地理学の醍醐味であろう。しかし目的に「保全」と書かれているのは、いかにもとってつけたようだ。どこの国でも金を取るには実学の仮面をつけないといけないのだなあ、と少ししみじみしてしまった。